電話をかける
家にいるかもわからない。そんな状態で、家に行っても越前と逢えるとは思わなかった。
それなら、ちゃんと話が出来るまでかけ続けようと、自分のベッドに座り込む菊丸。
トゥルルルル…トゥルルルル…トゥルルルル…カチャ…
「あ、おチ…」
「<ピーッ>ただ今、電話に出る事が…」
ピッ……
「ちぇー、まだつながんないや」
そんな事を言いつつ、携帯を放り投げながら勢いに任せてベッドに横になると、口を尖らせる。
最初の越前のドタキャン電話から、すでに1時間が過ぎていた。
何度もかけては留守電、かけては留守電を繰り返すのみで、全く変化は現れない。
今、あの子がどこにいて、何をしているのか…電話をかけてもつながらないなら、ここでこうしていてもわからないのは、当たり前。
天井をボーっと見上げながら、菊丸の手が携帯に触れた。
後一度。
もう一度だけかけてみよう。
これでつながらなかったら………。
そんな事を思いながら、起き上がると願いを託してボタンを押した。
トゥルルルル…トゥルルルル…トゥルルルル…カチャ…
「………」
「<ピーッ>ただ今、電話に出る事が…」
ピッ……