始まり
「ちょ…おチビ!?」
プッ……ツーッ…ツーッ
一方的に切られた携帯電話を見詰めながら、菊丸は呆然と立ち尽くしていた。
出かける準備も万全で、今日の天気は絶好のデート日和の晴れ。
そんな中、前々から約束をしていたデートの待ち合わせ場所に向かうため、部屋を出るトコでかかってきた恋人からの一本の電話。
何だろうと、嬉しい気持ちで電話に出た菊丸だったが、電話越しに聞こえた言葉は短く一方的だった。
『あ、先輩っスか? 越前っス。急用出来たんで、今日のデートはキャンセルってコトで。それじゃ』
それだけを告げると、コチラの返事も聞かずにそのまま切られた電話。呆然としたままだった菊丸の頭は、だんだんとデートをドタキャンされたのだと理解し始める。
あまりに突然すぎたために、頭がついていかなかったのだ。
「……何だよ、それ」
小さく呟くと、先ほど切られた電話番号にかけなおしてみるが、何度かけても繋がらない。コールはするのに、留守電に切り替わってしまうのだ。
特別な日というワケじゃないけれど。
越前の都合が悪くなったんだろうというコトは、わかるけれど。
やっぱりそれでも逢いたくて。
何度も悩みながら、何度も繋がらない電話をかけながら、菊丸が選んだのは一つの行動だった。